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 第7回の今週は、第27問について見ていきましょう。


 [問題]

 教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

 教授
 地上権と土地の賃借権について検討します。
 ただし,借地借家法は考えないことにしましょう。
 まず,存続期間について,何か違いはありますか。

 学生ア
 賃貸借の存続期間は20年を超えることができないとされています。
 これに対して,地上権にはそのような制限はありません。

 教授
 土地を利用する者がその権利を第三者に譲渡する場合,何か違いはありますか。

 学生イ
 地上権を譲渡するには,所有者の承諾を得る必要はありません。
 これに対して,賃借権の場合,賃借人は賃貸人の承諾を得なければ,賃借権を譲渡できません。

 教授
 地上権者がその土地に行ってみると,不法占拠者がいたとします。
 しかし,地上権はまだ登記されていません。
 この場合,地上権者は地上権に基づき,不法占拠者に土地の明渡しを求めることができますか。

 学生ウ
 地上権が設定されている以上,たとえ登記されていなくても,地上権者は不法占拠者に明渡しを求めることができます。

 教授
 利用者がその土地に物を附属させ,その後,存続期間が満了し,土地を明け渡す場合,附属させた物の取扱いはどうなりますか。

 学生エ
 賃借人には附属させた物を収去する権利があり,収去する義務もあると考えられています。
 これに対して,地上権者にはその土地に設置した工作物を収去する権利は認められていません。

 教授
 最後に,消滅時効について,何か違いはありますか。

 学生オ
 賃借権は債権ですから,時効によって消滅することがあります。
 これに対して,地上権は物権ですので,時効によって消滅することはありません。

 1.ア イ  2.ア オ  3.イ ウ  4.ウ エ  5.エ オ



 [検討]

 法務省のHPによれば、本問の正解は“5”となっています。




 重要な肢から検討しますが、まず、“肢ア”では、賃借権・地上権の存続期間について聞かれています。

 賃借権については20年を超えることができないと規定されています(604条1項)。

 これに対して、地上権については存続期間を定めた規定はありません。

 よって、本肢は“正”となります。

 これは、条文そのままなので、『押さえなければならない肢』といえるでしょう。




 次に、“肢ウ”では、
 @地上権者は妨害排除として、明渡請求をすることができるか?
 A地上権者は、その土地の不法占拠者に対して登記なくして地上権を対抗できるか?
の二点が聞かれています。

 @については、地上権も物権である以上、妨害排除請求権が認められるので、権利行使を妨害する者に対して明渡しを請求することができます。

 故に、@は正しいといえます。  Aについては、土地を不法占拠する者が、177条の「第三者」にあたるか否かによって決まります。

 この点、「第三者」とは、登記の欠けつを主張するにつき正当な利益を有する者をいうところ、土地の占有権限を有しない“不法占拠者”は登記の欠けつを主張するにつき正当な利益を有しないので、「第三者」にはあたりません。

 よって地上権者は、不法占拠者に対して登記なく地上権を対抗することができます。

 従って、Aも正しく、本肢は“正” となります。

 @の部分は、地上権の権利内容に関する基本的知識であり、Aは過去問平成5年第23問の肢ウ(前半部分)で聞かれるとともに、基本的な教科書であるSシリーズUの69頁にも記載がある基本的知識ですから、『押さえなければならない肢』といえるでしょう。

 以上から、“肢ア”“肢ウ”“正”となるので、消去法により選択肢5が正解となります。




 ちなみに、残りの肢も検討すると、“肢イ”では、権利譲渡の際の所有者の承諾の要否が聞かれています。

 この点、地上権については、譲渡にあたり所有者の承諾は不要ですが、賃借権については、612条1項により、譲渡にあたり所有者の承諾が必要です。

 よって、本肢は“正”となります。

 同じことは、過去問昭和61年第33問肢2でも聞かれており『押さえなければならない肢』といえるでしょう。




 “肢エ”では、賃借人・地上権者のそれぞれについて、収去権・収去義務があるか?が聞かれています。

 この点、賃借人については616条の準用する598条によって収去権・収去義務が認められ、また、地上権者については269条本文によって収去権が認められます。

 よって、本肢は“誤っている”といえます。

 これも、条文そのままなので、『押さえなければならない肢』といえるでしょう。




 “肢オ”では、賃借権・地上権のそれぞれについて、消滅時効の有無が聞かれています。

 この点、賃借権は、「債権」として167条1項により、また、地上権は、「債権又は所有権以外の財産権」として同条2項により、それぞれ消滅時効にかかります。

 よって、本肢は“誤っている”といえます。

 賃借権については条文そのまま、地上権については基本的な教科書であるSシリーズTの244頁にも記載がある基本的知識ですから、『押さえなければならない肢』といえるでしょう。



 [まとめ]

 以上から、“肢ア”“肢ウ”のみならず、他の肢についても押さえなければならない重要な肢といえますが、本問の正解を導くにあたっては、“肢ア”“肢ウ”がわかれば良かったといえます。

 よって、第27問における「関ヶ原」は、“肢ア”“肢ウ”といえます。

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