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 第4回目の今週は、第24問について見ていきましょう。


 [問題]

 被相続人Aの相続人がB及びCの2名である場合において、Aの遺産である甲不動産の権利関係に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。

 ア Aが「甲不動産をCに相続させる」との遺言をしていた場合、Bから甲不動産についてのBの持分の譲渡を受けたYがその旨の登記を具備していたとしても、CはYに対し、甲不動産を単独で所有していることを主張できる。

 イ Aの死亡時に唯一の知れたる相続人であったBが甲不動産をYに譲渡した後に、CをAの子であると認知する旨の判決が確定した場合、CはYに対し、甲不動産についての自己の持分を主張できない。  ウ AはYに甲不動産を譲渡し、その旨の登記を行う前に死亡したが、B及びCが相続を原因とする所有権移転登記を経た上で甲不動産をZに譲渡した場合、Zは、その旨の登記を具備しなくてもYに甲不動産の所有権を対抗できる。

 エ Bが、甲不動産について遺産分割がまだされていないことを知らないYに対し、甲不動産についてのBの持分を譲渡し、Yがその旨の登記を具備した場合、その後に、甲不動産をCが単独取得するとの遺産分割協議がされても、CはYに対し、甲不動産を単独で所有していることを主張できない。

 オ Bは家庭裁判所に相続放棄の申述をし、受理されたが、その受理前に、Bの債権者YがBに代わって相続を原因とする所有権移転登記をし、Bの持分を差し押さえた場合、CはYに対し、甲不動産のBの持分について自己の権利を主張できない。

 1.ア イ   2.ア エ   3.イ オ   4.ウ エ   5.ウ オ



 [検討]

 法務省のHPによれば、本問の正解は“5”となっています。

 まず、“肢イ”“肢エ”について見てみましょう。

 “肢イ”では、CがYに自己の持分を主張する前提として、そもそもCは甲不動産について持分を取得できるのか?が聞かれています。

 この点、他の共同相続人であるBが既に相続財産である甲不動産をYに譲渡しているため、相続開始後認知によって相続人となったCは、Bに対して価額のみによる支払の請求権を有するにとどまります(910条)。

 よって、Cは甲不動産について持分を取得せず、本肢は“正”となります。  同じことは、過去問昭和58年第44問肢4でも聞かれています。


 “肢エ”では、甲不動産についてのBの持分を、“遺産分割による相続財産の承継人”“遺産分割前の持分の承継人”のいずれが取得するか?が聞かれています。

 この点、遺産分割には遡及効がありますが(909条本文)、第三者の権利を害することはできないとされます(909条但書)。

 そして、Yは、Cが遺産分割により甲不動産を取得する前に、Bからその持分を譲り受けており、かつ、対抗要件も備えているので、「第三者」にあたり、Yとの関係では遺産分割の遡及効は制限されます。

 よって、Yは甲不動産の持分を取得し、本肢は“正”となります。  同じことは、過去問昭和58年第44問肢5でも聞かれています。


 この時点で選択肢を検討すると、消去法により、選択肢5が正解とわかります。

 ちなみに、残りの肢も見ておくと・・・

 まず、“肢オ”では、相続人の債権者は、相続人が相続放棄した後であっても、その持分を差し押さえることができるのか?が聞かれています。

 この点、相続放棄には遡及効があり(939条)、しかもそれは絶対的であり、何人に対しても効果を生じます。

 Bが相続放棄したことによって、Bは相続開始時に遡って相続人でなかったことになり、Bは相続財産について持分を有しなかったことになります。

 そして、この効果はBの債権者Yに対しても生じ、YはBの持分を差し押さえることが出来ず、本肢は“誤” となります。

 同じことは、過去問昭和58年第44問肢1でも聞かれているので、『押さえておくべき肢』といえるでしょう。


 次に、“肢ア”では、

 @特定の遺産を特定の者に「相続させる」旨の遺言によって、その財産がその者に承継されるか?
 A承継されるとして、その権利を登記なくして主張できるか?が聞かれています。

 この点、判例は、特定の遺産を特定の者に「相続させる」旨の遺言は、原則として“遺産分割方法の指定”の趣旨であるから、その財産は、被相続人死亡のときに直ちに相続人に承継される(最判平3年4月19日)としており、@は正しいことになります。

 また、判例は、特定の遺産を特定の者に「相続させる」旨の遺言によって不動産を取得した者は、登記なくしてその権利を第三者に対抗できるともいっています(最判平14年6月10日)。

 よって、Aも正しく、本肢は“正”となります。

 @については、過去問平成10年第39問肢2でも聞かれていますが、Aについては、過去問の出題がありません。

 従って、この肢について、知っているに越したことはありませんが、この問題を正解するにあたっては必要ありません。

 そして、“肢ウ”では、“相続人からの譲受人”“被相続人からの譲受人”とが対抗関係(177条)になるか?が聞かれています。

 この点、Yは、所有者Aから、甲不動産の所有権を取得した者であり、他方、Zは、Aの相続人(包括承継人)であるB及びCから甲不動産の所有権を取得した者であるから、YとZとは対抗関係となります(177条)。

 そのため、Zは登記なくしてYに対抗できないこととなり、本肢は“誤”となります。


 [まとめ]

 以上から、第24問における「関ヶ原」は、“肢イ”“肢エ”といえます。

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