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 第18回の今週は、第38問について見ていきましょう。


 [問題]

 親権者に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。

共同親権を有する父母の婚姻が破綻して別居状態にあるときは、家庭裁判所は、離婚後の子の監護に関する場合と同様、子と同居していない親権者と子との面接交渉について相当な処分を命ずることができる。
親権者が子の財産を管理する場合には、民法の委任の規定が準用され、親権者は善良な管理者の注意義務を負う。
親権者の一方と子との利益が相反する場合は、利益相反の関係にある親権者が特別代理人の選任を求め、子と利益相反の関係にない親権者及び特別代理人が共同して代理行為をしなければならない。
親権者とその二人の子が共同相続人である場合、親権者が同時に二人の子を代理して相続の放棄をし、その結果、親権者が被相続人を単独相続したときは、親権者が二人の子を代理して行った相続放棄は無権代理に当たる。
親権者である父母が離婚の際に親権者とは別に監護者を定めた場合、財産上の代理権は親権者が有するが、身分上の代理権は監護者が有するので、15歳未満の子が養子縁組をするときに縁組の相手方に対する承諾の意思表示ができるのは、監護者であって、親権者ではない。

1.ア ウ   2.ア オ   3.イ エ   4.イ オ   5.ウ エ



 [検討]

 法務省のHPによれば、本問の正解は“4”となっています。

 まず、“肢イ”では、“子の財産を管理するにあたって親権者が負うべき注意義務の程度”が聞かれています。

 この点、827条は、「親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。」としており、必ずしも、親権者は善良な管理者の注意義務を負うものではないので、本肢は、“誤”となります。

 このことは、条文そのままであるとともに、過去問昭和50年13問肢(2)でも出題されているので、本肢は、『押さえなければならない肢』といえます。



 次に、“肢オ”では、“親権者と監護権者の権限の違い”が聞かれています。

 この点、親権者が、“身分行為に関する代理権”のほか、“財産に関する法律行為についての代理権”も有しているのに対し、監護権者は未成年の子を世話して保護・監督・教育するといった事実行為を行う者であるから、「身分上の代理権は監護者が有する」という本肢前半部分は、“誤”といえます。

 また、797条1項により15歳未満の子の養子縁組に関する“代諾”は、法定代理人がするものとされるので、代理権を有しない監護権者は、その主体とならない。

 よって、本肢後半部分も、“誤”となります。

 代諾を親権者が行い、監護権者は同意を行うという点については、797条そのままであること、過去問昭和49年第74問肢(2)、平成8年第37問肢1、平成13年第33問肢ア・肢イ、及び、平成17年第31問肢ウの前半部分で出題されていることから、本肢も『押さえなければならない肢』といえます。



 以上から、“肢イ”“肢オ”が“誤”となるので、積極法により選択肢4が正解となります。



 この他の肢についても検討すると、“肢ア”では、“家庭裁判所が、父母が離婚した場合に、監護について相当な処分をすることができることを前提に、それが、離婚の前段階である別居状態にある場合にも可能といえるか?”が聞かれています。

 この点につき判例は、父母の婚姻が破綻して別居状態にある場合に、家庭裁判所は、民法766条を類推適用して、子と同居していない親と子の面接交渉について相当な処分を命ずることができる(最決平12年5月1日)としています。

 よって、本肢は、“正”となります。

 この判例は、「判例六法」「模範六法」には記載がありますが、基本的な教科書であるSシリーズには記載がなく、また、過去問でも出題がないので、本肢は、『知っていればよいが、知らなくてもよい肢』といえます。

 この機会に押さえれば足りるでしょう。



 “肢ウ”では、“共同で親権を行使すべき親権者の一方が、子と利益相反の関係にある場合にどのように親権を行使すべきか?”が聞かれています。

 この点、判例によれば、父母が共同親権者である場合において、その一方と子の利益が相反するとき、利益が相反する親権者のために特別代理人を選任した上、その者と他方の親権者とが共同で親権の行使をすべきと解されています(最判昭35年2月25日)。

 よって、本肢は、“正”となります。

 これについては、過去問平成2年第21問でも聞かれているので、本肢は、『押さえなければならない肢』といえます。



 “肢エ”では、利益相反行為について826条に反する行為は、無権代理として無効となる(最判昭35年10月11日)ことを前提に“本肢の事例が「利益が相反する」場合にあたるか?”が聞かれています。

 この点、判例は、後見人が被後見人を代理して相続放棄する場合において、後見人自身もまた相続放棄するときは、後見人と被後見人の間で、利益相反行為とはならない旨判示しており(最判昭53年2月24日参照)、これによれば、本肢のように、親権者が二人の子に相続放棄をさせておいて、自らは相続放棄しなかったような場合には、親権者の利益にはなるが、未成年者のためには不利益であるとして利益相反行為にあたると考えられます。

 よって、本肢は、“正”となります。

 この肢は、53年判例の知識があれば簡単に解けますが、その知識がなくても、あてはめの問題として現場で考えればよい肢といえます。



 [まとめ]

 以上から、第39問における「関ヶ原」は、“肢イ”“肢オ”といえます。  

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