第15回の今週は、第35問について見ていきましょう。
[問題]
代襲相続に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。
ア |
Aとその子Bはいずれも死亡したが、BがAの死亡後になお生存していたことが明らかでない。この場合、Bの子Cは、Bを代襲してAの相続人となる。
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イ |
Aの死亡前にその子Bが廃除によってその相続権を失った場合、その当時胎児でもなかったBの子Cは、Aの死亡時に胎児であったとしても、Bを代襲してAの相続人となることはない。
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ウ |
Aの死亡前にその子Bが廃除によってその相続権を失った場合であっても、Aが遺言によってその廃除を取り消し、その取消しの審判が確定したときは、Bの子CがBを代襲してAの相続人となることはない。
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エ |
Aとその養子Bが離縁すると、AとBの親族関係は終了するが、AとBの縁組後で、かつ、その離縁前に生まれていたBの実子Cは、その離縁後にAが死亡した場合、Bを代襲してAの相続人となる。
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オ |
Aの親族としては、配偶者のほか、亡弟Bの孫Cがいるだけの場合、Aが死亡すると、CはBを代襲してAの相続人となる。
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1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ
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[検討]
法務省のHPによれば、本問の正解は
“2”となっています。
まず、
“肢イ”から検討すると、
“肢イ”では、
“廃除の時点で胎児となっていない場合にも代襲相続が生じるか?”が聞かれています。
この点、
廃除が代襲原因とされ(887条2項)、また、
胎児は、相続について既に生まれたものとみなされます(886条1項)から、被相続人の子が、廃除により相続権を失った場合には、その者の子が胎児であっても代襲相続が生じることになります。
本肢では、被相続人の子であるBが、廃除により相続権を失っており、また、相続開始時にBの子Cが胎児となっているので、CはBを代襲してAの相続人となります。
よって、本肢は“正”となります。
なお、
886条1項は、相続開始時に相続人が権利能力者として生存していなければならないという“相続における同時存在の原則”の例外を定めた規定ですから、相続開始時に胎児となっていれば適用されます。
なので、“廃除の時点で胎児となっていない”点は、上記の結論に影響を及ぼしません。
過去問は、“被廃除者の子について代襲相続がある”点については、過去問平成13年第34問肢オで、“欠格者の子が胎児の場合にも代襲相続がある”点ことについては、過去問平成13年第34問肢エでそれぞれ聞かれており、また、本肢が条文を聞くものでもあることから
『押さえなければならない肢』といえるでしょう。
次に、
“肢オ”では、
“傍系血族についても再代襲があるのか?”が聞かれています。
889条2項が再代襲に関する887条3項を準用していないことから、傍系血族には再代襲はありません。
Bは、被相続人Aの弟であり、傍系血族にあたるので、再代襲はなく、孫であるCはBを代襲しません。
よって、本肢は“誤”となります。
これも条文問題であるばかりか、過去問昭和39年第21問肢(1)でも聞かれており、
『押さえなければならない肢』といえるでしょう。
以上から、
“肢イ”と
“肢オ”が“誤”となるので、消去法により選択肢2が正解となります。
なお、他の肢も検討すると、
“肢ア”では、
“被相続人と相続人の死亡時期の先後が不明の場合にも代襲原因となるか?” が聞かれています。
この点、
887条2項には「相続の開始以前に死亡」とあり、条文上、被相続人と相続人の同時死亡の場合が含まれています。
そして、“Aとその子Bがいずれも死亡したが、BがAの死亡後になお生存していたことが明らかでない”ということですから、32条の2により、AとBは、同時に死亡したものと推定されます。
よって、Bの子Cは、Bを代襲してAを相続することになり、本肢は“正”となります。
このことは、過去問平成13年第34問肢ウ、及び、過去問平成6年第26問肢カでも聞かれており、また、基本的な教科書であるSシリーズXの127頁にも記載がある基本的知識なので、
『押さえなければならない肢』といえます。
“肢ウ”では、
“相続人の廃除が取り消された場合にも代襲原因が認められるか?”が聞かれています。
この点、被廃除者は、廃除の取消しによって相続人の地位を回復しますが、この“廃除の取消し”は遺言によっても行うことができます(894条2項・893条)。
そして、その場合の効果は、相続開始時に遡って生じます(893条後段参照)。
そのため、Aのした廃除について取消しの審判が確定すると、被廃除者Bは遡って相続人の地位を回復し、相続開始時にはBが相続人であったことになります。
よって、Bにつき代襲原因はなく、CはBを代襲しないので、本肢は“正”となります。
この肢は、過去問の出題こそありませんが、条文そのままなので、
『押さえなければならない肢』といえます。
“肢エ”では、
“離縁された養子についても代襲相続があるか?”が聞かれています。
この点、
養子の実子が、養子を代襲して養親の相続人となるには、養子が養親の「子」でなければなりません(887条2項)。
そのため、離縁によって“養子”と“養親及びその血族”との親族関係が消滅すると、養子であるBは、養親Aの「子」でなくなるので、養子の実子であるCは、Bを代襲してAの相続人とはなりません。
よって、本肢は“誤”となります。
これも条文へのあてはめの問題といえるので、
『押さえるべき肢』といえるでしょう。
[まとめ]
本問の肢は、いずれも重要な肢なので、全部知っているに越したことはありませんが、過去問での出題があること、消去法のほうが正解を導くにあたって確実であることから、
“肢イ”及び
“肢オ”が特に重要であると考えます。
以上から、第35問における「関ヶ原」は、
“肢イ”と
“肢オ”といえます。
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