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 第14回の今週は、第34問について見ていきましょう。


 [問題]

 買戻しの特約と再売買の予約に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。

買戻しの特約は、その登記をしなければ当事者間においても効力を生じないが、再売買の予約は、登記をしなくても当事者間では効力を生ずる。
買戻しの特約は、売買契約と同時にしなければならないので、売買契約を締結した後に、「売主は、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買契約を解除することができる。」との合意をしたとしても、その合意は効力を有しない。
買戻しの特約は、売買契約の不可分の一部となるものであり、買戻しの特約付きの売買契約を締結した後に買戻しの特約のみを合意解除することはできない。
買戻しの特約に基づく売主の買戻権は、買主の承諾なくして譲渡することが可能であり、また、売主が再売買の予約完結権を譲渡する場合においても買主の承諾は不要である。
買戻権を行使するには買戻しの意思表示をするだけではなく、買主が支払った代金と契約の費用を返還することが必要であるが、再売買の予約完結権を行使するには相手方に対する予約完結の意思表示をするだけで足り、売買代金の返還は必要ではない。

 1.ア イ    2.ア オ    3.イ ウ    4.ウ エ    5.エ オ



 [検討]

 法務省のHPによれば、本問の正解は“5”となっています。

  まず、“肢オ”では、“買戻権・予約完結権の権利行使の方法”が聞かれています。

 この点、買戻権については、583条1項が「代金及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない。」と規定しており、本肢の前半部分は正しいといえます。

 また、予約完結権は、一方的意思表示によって契約を成立させる形成権ですから、意思表示のみによって行使することができ、必ずしも売買代金を返還する必要はありません。

 なので、本肢の後半部分も正しいといえ、本肢は“正”となります。

   このことは、過去問昭和58年第65問肢2でも聞かれている他、基本的な教科書であるSシリーズWの97頁にも記載がある基本的知識ですから、『押さえなければならない肢』といえます。



 次に、“肢エ”では、“買戻権・予約完結権の譲渡に買主の承諾が必要か?” が聞かれています。

 この点、買戻権・予約完結権ともに、買主の承諾なくして譲渡することができるものとされており、本肢は“正”となります。

 このことは、過去問の出題こそはありませんが、「買戻し」と「再売買の予約」という似て非なる制度の相違点をまとめた表として、大抵の受験参考書にも記載がありますし、基本的な教科書であるSシリーズWの96頁にも記載がある基本的知識ですから、『押さえなければならない肢』といえます。



 以上から、“肢オ”“肢エ”が“正”となるので、積極法により選択肢5が正解となります。



 ちなみに、他の肢も検討すると、“肢ア”では、“登記が「買戻し」や「再売買の予約」の効力要件か?”が聞かれています。

 この点、買戻しについては581条1項で登記が対抗要件とされており、効力要件とはなっていないので、本肢前半は誤りといえます。

 また、再売買の予約は、売主に対して予約完結権を与えることを内容とする契約ですから、契約自由の原則から、当事者間の合意があれば足り、登記をしなくても効力が生じます。

 なので、本肢後半は正しいといえます。

 よって、本肢は“誤”となります。

 この肢は、条文知識なので『押さえなければならない肢』といえます。



 “肢イ”では、“売買契約後になされた買戻し特約の効力”が聞かれています。

 この点、579条が「売買契約と同時にした買戻しの特約により」と規定していることから、買戻しの特約は、売買契約と同時になされなければならず、これが売買契約締結後になされた場合には、579条以下の「買戻し」としては、無効となります。

 もっとも、契約自由の原則からすれば、売買契約締結後になされる「売主は、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買契約を解除することができる。」との合意も有効であるといえます。

 よって、本肢の前半は“正”といえますが、後半部分は“誤”といえます。

 なお、本肢のような合意は、再売買の予約であると意思解釈することができます。

 本肢の前半は、条文そのままなので、『押さえておかなければならない知識』といえます。

 他方、後半部分については、基本的な教科書であるSシリーズには記載がありませんが、“契約自由の原則”という民法上の基本原則から考えれば正解を導くことができます。

 その意味で、本肢は、『押さえるべき肢』といえます。



 “肢ウ”では、“買戻し特約についてだけ合意解除できるか?”が聞かれています。

 この点、判例によれば、売買契約締結後に買戻し特約だけを合意解除できるとしており(大判大10年3月31日)、本肢は、“誤”となります。

 このことは、基本的な教科書であるSシリーズには記載がなく、また、過去問での出題もないので、『知らなくてもよい肢』ということになります。



 [まとめ]

 以上から、第34問における「関ヶ原」は、“肢エ”“肢オ”といえます。

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