第8回 〜過去問(3)〜
今週は、民法平成5年第4問の問題及び解説です。
[問題]
外国人又は外国法人に関する次の記述中、誤っているものはどれか。
1 |
外国人は、法令又は条約に禁止又は制限が規定されている場合を除き、我が国においても権利能力を有する。
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2 |
外国人の権利能力が制限される場合には、外国人は信託法上の受益者としてその権利を有すると同一の利益を享受することはできない。
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3 |
国、国の行政区画、商事会社又は法律若しくは条約により認許されたもの以外の外国法人は、我が国において、法人格が認められない。
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4 |
外国法人は、我が国において事務所設置の登記をするまでは、他人はその法人の成立を否認することができる。
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5 |
我が国において認許された外国法人は、外国人が享有することができない権利であっても取得することができる。
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検討
肢1について
民法第2条は、「
外国人は法令又は条約に禁止ある場合を除く外私権を享有す」と規定する。
ここに「
私権を享有す」とは権利能力を有することをいうので、
民法第2条から
1は正しい。
肢2について
信託法10条は、「
法令ニ依リ或財産権ヲ享有スルコトヲ得サル者ハ受益者トシテ其ノ権利ヲ有スルト同一ノ利益ヲ享有スルコトヲ得ス」としている。
外国人の権利能力は法令により制限されうるので(
民法第2条)、法令により外国人の権利能力が制限されている場合には、
信託法10条により、外国人は信託法上の受益者としてその権利を 有するのと同一の利益を享受することはできない。
よって、
民法2条及び
信託法10条から、
2は正しい。
肢3について
民法36条1項は、「
外国法人は国、国の行政区画及び商事会社を除く外其成立を認許せず、但法律又は条約に依りて認許せられたるものは此限りに在らず。」と規定する。
法人がその法人格を取得するためには、その成立を認められる必要があるので、その成立を否定された場合には、法人格が認められない。
よって、国、国の行政区画及び商事会社以外の外国法人は、
36条1項本文により、又それ以外の会社においても、法律若しくは条例で認許されないものは、
36条1項但書により例外的にその成立を肯定しえないので、法人格は認められない。
したがって、
民法36条1項から
3は正しい。
肢4について
民法49条2項は「
外国法人が始めて日本に事務所を設けたるときは其事務所の所在地に於て登記を為すまでは他人は其法人の成立を否定することを得」と規定する。
よって、
民法49条2項から、
4は正しい。
肢5について
民法36条2項は「
前項の規定に依りて認許せられたる外国法人は日本に成立する同種 の者と同一の私権を有す。但外国人が享有することを得ざる権利及び法律又は条約中に特 別の規定あるものは此限りに在らず。」と規定する。
よって、
36条2項但書の規定から、認許された外国法人といえども外国人が享有しえない権利は外国法人も享有しえないので、
5は誤り。
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