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第7回 〜過去問(2)〜



 今週は、民法平成5年第4問の問題及び解説です。



 [問題]

 代理に関する次の記述中、正しいものはどれか。

 本人が代理人に対して特定の家屋の購入を委託したが、その家屋に契約した目的を達成できない程度の隠れた瑕疵があった場合において、代理人がその瑕疵を知らなかったときは、本人がこれを知っていた場合であっても、本人はその契約を解除することができる。
 未成年者を代理人に選任した場合に、その者が代理人としてした法律行為は、本人がこれを取り消すことができる。
 法定代理人は、やむを得ない事由で複代理人を選任した場合には、本人に対して責任を負うことはない。
 代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合であっても、相手方がその本人のためにすることを知っていたときには、その意思表示は、直接本人に対して効力を生ずる。
 複代理人は、代理人を代理するものであって、本人を代理するものではない。





検討


 肢1について


 家屋を購入し、その家屋に隠れた瑕疵があった場合、民法570条が適用される。

 民法570条は、566条を準用し、566条1項は「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害の賠償のみをすることができる。」と規定する。

 したがって、@目的を達することができない場合で、A買主が善意無過失であれば、買主は解除できることになる。

 本件で、購入の対象たる家屋の瑕疵は、目的を達成できない程度のものであるから、@目的を達することができない場合といえる。

 ところが、本件家屋の売買は、代理人によってなされている。

 そして、瑕疵の存在につき、代理人は知らなかったものの、本人は知っていたという事情がある。

  そこで、A買主が善意無過失といえるか問題となる。

 この点、民法101条1項は「意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする」が、同2項は「特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。」とする。

 本件で、代理人は本人より特定の家屋の購入を委託され、その家屋を購入していることから、101条2項が適用される。

 したがって、本人の事情を基礎に前述したA買主の善意無過失を判断することになる。

 そして、本件で、本人は、家屋の瑕疵につき知っていたというのであるから、A買主は悪意であり、買主が善意無過失であるとはいえない。

 したがって、570条が準用する566条1項による解除の要件を具備しないので、本人は契約を解除できない。

 よって、1は解除できるとする点で誤りである。


 肢2について


 2では、未成年者が代理人となって代理行為を行っている。

 この点、民法102条は「代理人は、行為能力者であることを要しない。」と規定する。

 したがって、未成年者が代理人として行った法律行為については、行為無能力を理由とする取り消しはできない。

 よって、2の肢でも、本人は、未成年者がなした代理行為を取り消すことはできないので、これができるとする2の肢は誤りである。


 肢3について


 法定代理人が復代理人を選任した場合の責任について、民法106条が定める。

 民法106条は、「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第1項の責任のみを負う。」と規定する。

 したがって、法定代理人が復代理人を選任した場合の責任について、復代理人の選任がやむを得ない事由によりなされた場合には、民法105条1項に基づく責任を負うことになる。

 よって、本人に対して責任を負うことはないとする3の肢は誤りである。


 肢4について


 代理人が本人のためにすることを示さずして意思表示を行った場合、いわゆる顕名がない場合について、民法100条が規定を設けている。

 民法100条は「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。」と規定する。

 したがって、相手方がその本人のためにすることを知っていたときは、100条但書が適用されるので、前条第1項を準用される。

 その結果、直接本人に対して効力を生ずる。

 よって、直接本人に対して効力を生ずるとする4の肢は正しい


 肢5について


 復代理人の地位については、民法107条が定める。

 民法107条1項は、「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。」と規定する。

 したがって、復代理人は、本人を代理することになるので、本人を代理しないとする5の肢は誤りである。



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