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 さて、第5回目は、“警察法改正無効事件”です。

 テーマは「司法権の限界」です。 

 判旨自体は短く、これまで触れてきた判例と比べると“ちょっと一息”といったところでしょうか?

 過去問では、平成8年第12問・平成17年第11問・平成18年第14問に出題されています。

 平成元年第1問でも、前提として聞かれています。

 本判決は、『違法な支出』について支出禁止を求める事ができることを前提に、議会の議決があっても別途支出に違法があれば『違法な支出』になるとし、本件支出が違法となる理由として、


 @新警察法制定手続が憲法に反する、

 A新警察法の内容が憲法92条に反するとの住民らの主張について判断したものです。



 「司法権の限界」として引用される部分は、この理由@に関する判断としてなされたものです。






大阪府の住民が、府の警察費の支出を違法として、その支出禁止を求めた事件。






 地方自治法二四三条の二による住民の監査請求及び訴訟は、議会の議決の是正を目的とするものではない。

 しかしながら、長その他の職員による公金の支出等も、法令の規定に従わなければならないのは勿論であり、議会の議決があったからというて、法令上違法な支出が適法な支出となる理由はない。

 同法が、第五章の議会の解散請求とは別に二四三条の二を規定した趣旨は、個々の住民に、違法支出等の制限、禁止を求める手段を与え、もって、公金の支出、公財産の管理等を適正たらしめる点にある。

 とすれば、監査委員は、議会の議決があった場合にも、長に対し、その執行につき妥当な措置を要求することができ、ことに訴訟においては、議決に基づくものでも執行の禁止、制限等を求めることができるものとしなければならない。

 上告人が本件支出を違法と主張する理由を見るに、上告人は、警察法が無効である旨を主張し、無効な法律に基づく支出なるが故に違法である旨を主張するのである。

 そして上告人は、右警察法を無効と主張する理由として、まず、同法を議決した参議院の議決は無効であって同法は法律としての効力を生じないとするが、同法は両院において議決を経たものとされ適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない。

 従って所論のような理由によって同法を無効とすることはできない。

 次に、同法はその内容において憲法九二条に反するというのであるが、同法が市町村警察を廃し、その事務を都道府県警察に移したからといって、そのことが地方自治の本旨に反するものと解されないから、同法はその内容が憲法九二条に反するものとして無効な法律といいえない。

 以上説明のように警察法は無効でなく、上告人は他に本件支出の違法原因を主張するものでないから、上告人の本訴請求は、請求自体理由がないものといわなければならない。



 以上


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