司法書士試験は、「司法書士になる資格」を得るための試験です。
 司法書士試験に合格すると、この「司法書士になる資格」が与えられ、登録をすることによって司法書士になることができます。
 では、そもそも司法書士ってどういう仕事をするのでしょう?

司法書士の仕事

 司法書士の業務には、


 他人の依頼を受けて、

 @登記又は供託に関する手続について代理すること、
 A法務局等へ提出する書類などを作成すること、
 B登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること、
 C裁判所・検察庁へ提出する書類などを作成すること、
 D以上の事務について相談に応じること、
 E簡易裁判所における一定の手続について代理すること があります。
 (ただし、Eを行うためには、合格後に司法書士会の会員となり、研修を受け、法務大臣による認定を受けることが必要です)

 では、これらは、具体的にはどのような業務なのでしょうか。
 @〜Eを少し詳しく見てみましょう

@登記又は供託に関する手続についての代理

登記に関する手続の代理
 司法書士の業務の中で一番大きな部分を占めるのが、この登記申請手続の代理です。
 依頼人から登記申請の依頼を受け、登記申請書を作成し、
 必要な添付情報を調えて、登記所へ代理人として申請を行います。
 登記とは、一定の事項を広く社会に公示するために公開された公簿(登記簿)に記載することをいいます。
 広く社会に公示することで、取引関係に入ろうとする第三者に対して、
 権利・権利関係・権利主体の内容をあらかじめ明らかにし、第三者に不測の損害を与えないようにする制度です。
 登記制度にはいくつか種類がありますが、主に不動産登記と商業登記が仕事の中心になります。
 不動産登記とは、「不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記」です。
 不動産とは、簡単に言えば、土地と建物です。
 たとえば、あなたが土地を購入した場合には、あなたは土地の所有権を取得することになります。
 しかし、所有権という権利は目に見えません。そこで、あなたは自分の権利を広く社会に知らせるために不動産登記をすることができます。
 また、次にその土地を買おうと思う人がいる場合には、登記簿を見ることであなたに土地の所有権があることを確認することができます。
 このように、登記をすることで「権利の保全」と「取引の安全」を確保することができるのです。

 その他の登記としては、会社以外の法人(財団法人など)の登記、企業担保権の登記、債権譲渡登記、成年後見登記などがあります。


供託に関する手続の代理
 次に、供託とは、法令の規定により、金銭や物品等を供託所又は一定の者に寄託する(預ける)ことをいいます。
 供託には、弁済のための供託(弁済供託)や、後の支払いを確保するなど担保のための供託(担保供託)、
 民事執行の目的たる金銭または換価代金を当事者に交付するための供託(執行供託)、保管のための供託(保管供託)、
 その他選挙の際に立候補者がする供託など特殊の目的のためにする供託(特殊供託)などがあります。
 供託を簡単に言えば、供託所という国の機関を利用し、金銭や物品を預けることで一定の目的を達成する制度です。
 司法書士は、供託をしたい人から依頼を受けて供託手続を代理することができます。

A法務局等へ提出する書類などの作成
 @で見た、登記の申請の際に必要となる書類や、供託の手続の際に必要となる書類などを作成します。

B登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること  
 登記や供託の申請をしたけれど、登記(あるいは供託)されなかったというような場合に、
 登記官(供託官)のした手続や判断を不服として、審査の請求をすることができます。
 司法書士は、その申請の代理をすることができます。

C裁判所・検察庁へ提出する書類などの作成  
 裁判所へ提出する書類とは、訴状、答弁書その他準備書面等を指します。
 他の法律で制限されていない限り、全ての書類の作成をすることができます。
 (訴訟代理については、簡易裁判所に関するもののみがEで認められています)
 検察庁へ提出する書類とは、告訴状、告発状等を指します。

D以上の事務について相談に応じること
 以上の事務について仕事を依頼された時に、依頼内容を法律的にまとめるなどの相談に応じることができます。
 登記申請の代理や提出書類作成に必要な範囲での相談を指します。

E簡易裁判所における一定の手続について代理すること
 訴訟代理一般は、弁護士の独占業務ですが、簡易裁判所の管轄の事件については、
 司法書士にも訴訟代理権が認められています。
 この事務を行うには、司法書士試験に合格後、一定の研修を受け、いわゆる「認定司法書士」となる必要があります。


以上のように、司法書士の業務は、国民の権利保護に寄与する、重要で、かつ、やりがいのある業務です。
さあ、あなたも挑戦してみませんか?




 それでは、司法書士試験の内容を見てみましょう。


受験資格
 年齢、性別、学歴等を問いません。誰でも受験することができます。

出願時期
 例年、5月第2週から第3週にかけて10日間程度。なお、試験は毎年1回です。

試験日程・科目
 筆記試験と口述試験があります。
 筆記試験が司法書士試験の天王山であり、筆記試験をクリアする実力があれば、
 口述試験はそれほど恐れる必要はありません。

 筆記試験は、例年7月の第一日曜日に行われます。 (平成20年度は、平成20年7月6日(日)です。)

筆記試験の内容
 (1)憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む。)及び刑法に関する知識。
 (2)不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)
 (3)供託並びに民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識
 (4)その他、司法書士法第3条1項第1号から第5号までに規定する業務
 (※上記「司法書士の仕事」のうち@〜Dのことです)を行うのに必要な知識及び能力

 午前の部(2時間)
  上記(1)について、多肢択一式(5者択一)で35問出題されます。  
  出題の内訳は、おおむね憲法3問、民法21問、商法(会社法等)8問、刑法3問です。

 午後の部(3時間)
  上記(2)〜(4)について、多肢択一式(5者択一)で35問、(2)について記述式で2問が出題されます。  
  択一式の出題の内訳は、おおむね不動産登記16問、商業登記8問、供託3問、
  民事訴訟・執行・保全7問、司法書士法1問です。  
  記述式の内訳は、不動産登記1問、商業登記1問です。  
  択一式、記述式併せて3時間の枠で試験を行い、この3時間の中で自由に順序を決めて解答することができます。

 試験会場
  法務局、地方法務局ごとに会場が指定されます(各都道府県に会場が用意されます)。

 筆記試験の結果発表
  9月下旬頃です。

 口述試験の内容
  口述試験は、例年10月上旬頃に行われます。
  試験内容は、筆記試験の科目と同様です。

 最終合格者の発表
  11月初旬です。

試験の難易度
 平成20年度試験では、受験者数27,102名に対し、合格者は931名(男691名、女240名)でした。
 対受験者合格率は、3.4%という難関です。

 法務省HPで確認できる平成14年以降を観察すると、出願者数は
 平成14年度の2万5千人から徐々に増加し、平成20年度は3万3千人を超えました。
 平成14年度から平成20年度の増加率は130%です。
 一方の合格者数は、確認できる平成16年以降を見ると865名から平成20年の931名へと
 わずかに増加しています。平成16年度から平成20年度の増加率は、108%です。
 近年の司法制度改革により司法試験合格者が激増していることと比較すると、司法書士試験の合格者は、
 出願者数に応じて合格者数は増えているものの、ほぼ一定の割合に抑えられていると言えます。


(実際の受験者数については、不明な年度があるため、グラフ化を省略しました)



 グラフを見ると、平均合格率2.8%というのは大変な難関だということがわかります。
 しかし、法律の勉強をやったことのある人しか受からない試験ではありません。
 司法書士試験の勉強をやるのが、「法律初体験」という方で合格する人が、毎年大勢います。
 あなたが法律初学者だという場合でも、勉強方法さえ選べば、合格は夢ではありません。
 それでは、司法書士試験の合格には何が求められ、どういった勉強をすればよいのでしょうか??


  「司法書士試験合格に要求される力とは?」へ進みましょう!


資料(最近の出願者数等)
年 度(平成) 14 15 16 17 18 19 20
出 願 者 数 25,416 28,454 29,958 31,061 31,878 32,469 33,007
対前年度増減数 - 3,038 1,504 1,103 817 591 538
受 験 者 数 - 不明 不明 不明 26,278 26,860 27,102
合 格 者 数 - 不明 865 883 914 919 931
男(M),女(F)内訳 - 不明 M663,F202 M636,F247 M647,F267 M654,F265 M691F240
対出願者合格率 - - 2.8% 2.8% 2.8% 2.8% 2.8%
対受験者合格率 - - - - 3.4% 3.4% 3.4%
筆記試験合格点
(262点満点)
- - 197.0点
以上
203.5点
以上
202.5点
以上
211.5点
以上
189.5点
以上
@午前択一足切り
(105点中)
- - 78点に
達しない
87点に
達しない
81点に
達しない
84点に
達しない
84点に
達しない
A午後択一足切り
(105点中)
- - 72点に
達しない
78点に
達しない
75点に
達しない
84点に
達しない
78点に
達しない
B記述式 足切り
(52点中)
- - 31.5点に
達しない
25.5点に
達しない
31.5点に
達しない
30.0点に
達しない
19.5点に
達しない
足切りクリア後
合格に必要な点数
- - 15.5点 13点 15点 13.5点 8点

<参考資料>

  法務省「資格試験 司法書士試験」のページ
   http://www.moj.go.jp/SHIKEN/index2.html#03

  上記ページ内「平成20年度司法書士試験受験案内」
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji08.pdf

  同「平成20年度司法書士試験の最終結果」
   http://www.moj.go.jp/PRESS/081104-1/081104-1.html